「ワイヤードのアノニマスな存在として永遠に生き続け,そこを情報によって支配しえる存在…」「…そういう存在をなんていうと思う?」「…神」。
先週末開かれたパラドックス2会議の主題は,以下のようなことだった。サイバースペースの問題点は,人間がそこに捕まってしまい現実に関心を持たなくなってしまうことだということ。さらに,将来,高性能の人工知性体ロボットなどが,地球の支配権を握ってしまうことがあるか,ということ。だが,どちらの主題にも否定的な意見が多かった。「誰かと現実に合うことほどエネルギーのある経験はない」「コンピューターの知性は非常に限られたもので,人間の知性の小さな側面に過ぎない」などと。
『テック・グノーシス』(WIRED NEWSの詳細記事)のエリック・デイビスや,『サイバーグレース』のジェニファー・コッブなどの名もあがる,興味をそそられる会議のレポート。文章が整っていないのが残念だが,そのやりとりは興味深い。ロボットによる支配社会,というノスタルジックな話題もあるが,ここではあえて,取り上げて欲しい主題の提起を。ワイヤードに神は,いるのか?
リアルワールドでは,神の存在は宗教の定義へと当てはめられるが,ワイヤードでは,プロトコルですべての支配を可能とする存在はありえるのではないだろうか。もともと,「ネットワーク」という人が繋がるという意思の起源は,神話の世界を元とするほどのものだろう。リアルワールドでテクノロジーが神となることは考えられないが,人を虜にするワイヤードに,その支配の象徴としての神は存在する,という思想は考えてみる価値がある。…サイバースペースの人間性には,そんな議題も必要かもしれない。
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